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第七章
「俺さ、もう一度道場に通うよ」
「……んっ」
そっと三蔵の白い胸元に唇を這わせながら、低い声で悟空が呟く。 白いシーツの波に緊張させた肢体を横たえ、いささか困惑気味に悟空の愛撫を受ける三蔵の姿は、眩暈を起こしそうな程綺麗で艶かしくて。
肉が落ちてやつれた身体は痛々しいが、それでもみすぼらしいとか、みっともないとかは、ちっとも感じさせない。却ってその華奢な肩や、薄い胸板は悟空の中にある、雄の庇護欲や嗜虐心を目覚めさせるのに十分過ぎる程だった。
これから自分の身の上に起きる事に怯えを隠しきれない三蔵の、小刻みに震える白い裸体を優しく抱き締めると、柔らかな耳朶をそっと甘噛みし、そのまま綺麗なラインの首筋に舌を這わせていく。その濡れた感触に、三蔵がぶるり、と身体を震わせた。
「でも、オリンピックとか、大会にはもう出ねぇよ」
記録とか、勝利とか、そんなモノの為に柔道を続けるのではない。誰よりも愛しい人を守る為に、もっともっと強くならないといけないから。
「誰も、てめぇに、守って欲しいなん、ざ……あっ!」
可愛くない事を言う愛しい人へのお仕置きとばかりに、悟空はその滑らかな手触りを楽しんでいた胸の小さな突起に、その悪戯な指を伸ばして、きゅっと軽く摘み上げた。その微かな痛みを伴う刺激に、三蔵は小さく白い喉を仰け反らせて思わず声を漏らしてしまう。
その甘やかな声に嬉しそうに金瞳を細めた悟空は、綺麗なピンク色の突起を指の腹で押し潰し、軽く爪で引っ掻いては、湧き上がってくる快感から逃れようと必死に身を捩る三蔵を追い詰めていく。
「だからさ、三蔵もバイオリン弾いて?」
再び三蔵の耳元に唇を寄せて、低く吐息を吹き込みながら、悟空は飽く事なくツンと刺激で固く尖った三蔵の胸飾りを弄ぶ。
「オーケストラ辞めるって言うんなら、もう止めねぇから。でも、バイオリンはやめないで?」
「や、ごくっ……」
片手は赤く熟れた胸の突起を愛したまま、もう片方の手がするり、と三蔵の下肢に伸びて、布越しに三蔵自身をゆるゆると愛撫し始めた。
「ね?」
「あ、やぁ……」
にっこりと微笑みながらも、悟空の手は器用に三蔵のジーンズのジッパーを外して中に忍び込み、その骨太な指を早くも熱を帯び始めている三蔵自身に絡めて、ゆっくりと刺激を与えていった。自分自身では殆どといっていい程、処理を施した事のない三蔵は、悟空の指先の巧みな動きに簡単に高みに導かれてしまう。
「ご、ごくっ。もう……」
「いいよ、三蔵。我慢しないで」
頬を紅潮させて、紫暗の瞳に薄っすらと涙を浮かべて喘ぐ三蔵。酸素を求めて開かれた唇から覗く赤い小さな舌が、まるで悟空を誘っているようで。 ごくり、と唾を飲み込むと、悟空は三蔵への愛撫を休めずにそのまま華奢な身体に覆い被さって、その赤く濡れた肉厚な唇に己の唇を深く重ねた。
「ん……っ」
呼吸を奪われ、痛い程強く舌を吸われて、三蔵は苦しげに綺麗な眉を顰めた。しかし抗議の声さえも悟空に飲み込まれて、ただ鼻から抜けるような甘い声だけが、悟空の鼓膜を揺さぶる。
口腔を悟空の熱い舌でいい様に翻弄され、胸の突起と三蔵自身も、その指先で休む間もなく追い上げられていく。快楽に幼い三蔵の身体は、悟空に与えられる刺激に逆らう術もなく、導かれるままにその熱を解放した。
「あぁぁぁ……っ!」
熱い迸りが、悟空の手を濡らす。 達する時の三蔵の声が聞きたいと、その直前で悟空は三蔵の唇も解放してやる。その白い喉元を仰け反らせて溢れ出た声は、いつもの三蔵からは想像も出来ない程高く、そして例えようも無い程の艶に満ちていて。初めて目にする三蔵の痴態と、嬌声に、悟空の中の雄に火が点る。
「三蔵、すっげー綺麗」
薄い胸板を上下して荒く息を吐く三蔵を、うっとりとした眼差しでみつめる。薄紅に染まった肢体も、過ぎる快楽に流した涙で濡れた頬も、潤んだ深い紫色の瞳も。吐き出された精で白く汚れた下肢さえもが、目も眩みそうな程に艶かしくて、煽情的で。 優しく愛してあげたいと思う反面、悟空は今すぐにでも、その愛しい身体を欲望のままに貪り尽くしたい誘惑に駆られる。
「……ワガママな、猿だな」
「三蔵?」
しばらくは射精の余韻で、涙を流したままぼんやりと宙を見つめていた三蔵が、少し掠れた声で小さく呟く。 何のことかわからなくて、小首を傾げて三蔵の顔を覗き込む悟空に、三蔵は深いため息をつくと、重い瞼をゆっくり閉じて告げた。
「てめぇの、専属バイオリニストになってやる」
「え?」
上がった息を整えながら、少し照れたようにぼそっと呟く三蔵に、益々悟空は首を傾げて愛しい人の紫暗の瞳を見つめる。
「もうてめぇ以外の前では、バイオリンは弾かねぇ」
これからは恩師の助手でもしながら、悟空にだけバイオリンを奏でる。もう二度と聴衆の前では、バイオリンは持たない。 悟空の為に始めたバイオリンだから。これからは本当に、悟空の為だけに弾き続ける。
「ンで、文句ねぇだろう」
「三蔵……」
それはこれからもバイオリンを弾いて欲しいと願う、という悟空への三蔵からの答え。 世界中のバイオリニストが羨み、世界中の聴衆が焦がれる音色を、悟空ひとりに捧げるのだと。これからは、三蔵の生み出す音色は、ずっとずっと悟空ひとりのものになるのだと。
それは三蔵の悟空への、遠まわしの告白のように思われて。 いや、事実確かにそうなのだろう。 そんな三蔵に、悟空はたまらない程の愛しさで、胸がいっぱいになる。
愛しくて、愛しくて、どうにかなってしまいそうな程、この黄金に輝く魂が愛しくてたまらない。 それを言葉にして伝える事のできないもどかしさに、悟空は溢れ出る想いを、愛する人の柔らかな金糸に、頬に、瞼に、唇に、その身体の全てに、まるで羽毛のように小さな優しいくちづけに込めて贈る。
「……ん」
うっとりと心地良さそうに、柔らかなくちづけを受け入れる三蔵に、悟空は夢見るように呟いた。
「三蔵がいつも弾いてくれるあの曲さ」
「……『ロザリオ・ソナタ』か?」
少し息の整ってきた三蔵が、それでもいささか掠れた声で答える。
「うん。あの曲が一番好きな理由って、あの曲が一番三蔵の声を思い出させるからなんだ」
甘く、低く、哀愁と、どこか力強さを感じさせる、艶やかな音色。 そんな三蔵の声にぴったりの音色が、一番似合う曲だと。だから、あの曲がずっと好きだった。
「だから、またあの曲、弾いて?」
そっと両手で三蔵の頬を包んでにっこりと邪気のない笑顔を浮べる悟空に、再び目尻を赤らめた三蔵はぷいっと視線だけを小猿から反らして、ぼそりと呟いた。
「……この、馬鹿猿」
「い、痛っ……」
「三蔵、大丈夫?」
「い、いいから、続け……あぁっ!」
三蔵の細い足を大きく開いて、自分を受け入れてくれる蕾にそっと指を挿し入れる。 しかし元来が物を受け入れる為の器官ではない上に、こういった行為が初めての三蔵のそこは酷く狭くて、悟空の指一本を含ませる事さえできない。
下肢を鋭く突き抜ける痛みに、シーツをぎゅっと握り締め、歯を食いしばって耐える三蔵の姿が痛々し過ぎて。このまま無理をして三蔵を抱いてもいいのか、と悟空の胸がずきん、と痛む。三蔵を傷つけてまで、苦しめてまでして、するべき行為なのかと。
「てめ、余計な事、考えてんじゃ、ねーよ」
そんな悟空の心を見通したのか、頭上から三蔵の苦しげな声が響いた。
「三蔵」
「俺が、いいって言ってんだから、いいんだよ」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ三蔵に、申し訳なさと愛しさが募る。
痛みじゃなくて、苦痛じゃなくて、快楽だけを与えてあげたい。 この綺麗な身体と魂に、自分の彼への愛情を余す事なく刻み付けたい。 己の下肢に顔を埋めて身体を開こうとしている悟空の柔らかい髪を、震える指でそっと梳いてくれる三蔵。そんな三蔵になんとかして応えたくて、悟空は三蔵の蕾に含ませかけた指を慎重に抜くと、徐に三蔵の身体を引っくり返して膝を立てさせた。
「ご、ごくうっ?」
一瞬自分の身に起こった事が出来ずに、呆然と悟空の成すがままにされた三蔵ではあったが、次の瞬間自分の取らされた体勢に気づき、己の腰をがっちりと掴んで放さない悟空に悲鳴に声で抗議した。
「や、やめろっ! こんなっ」
膝をついて腰だけを高く悟空に差し出すような己の姿に、三蔵は羞恥のあまり憤死しそうだ。バタバタと暴れて抵抗する三蔵に、悟空はその真っ白で滑らかな背中にいくつのもくちづけを落としながら、腕の中の愛しい人を懸命に宥めようとする。
「ゴメン、三蔵。でもあのまんまじゃ、三蔵が辛いから。だから、少しの間だけ我慢して? ずっとこのまんまには、しないから。ね?」
背中から聞こえる、心底自分を案じる悟空の声に、三蔵は羞恥と屈辱で真っ赤に染まった顔を、枕にぎゅっと埋めた。 「三蔵……」
華奢な肩をふるふると震わせる三蔵の姿に、やはりこの体位はプライドの高い彼には屈辱的過ぎるか、と悟空は考える。 嫌がる三蔵に、無理強いはできない。したくない。 そう思った悟空は、立たせた三蔵の膝を静かに伸ばしてやり、そっと壊れ物を扱うようにそのすべらかな背中を優しく撫でてやる。
「ゴメンね。どうしても嫌なら、やめるよ?」
優しく労わるかのような悟空の声と手のひらのぬくもりに、三蔵の抵抗が止んだ。 三蔵の気持ちを何よりも最優先させようという、悟空の気持ちが自分の背を撫でるその手のむくもりから、痛い程に伝わってくる。その気持ちがあまりにも愛しくて。 この体勢も自分の身体を思い遣っての上での事と思えば、頑なにそれを拒むのも大人げない気がする。
何よりも悟空を受け入れる、と決めたのは自分自身なのだ。 三蔵はきつく唇を噛み締めると意を決して、おずおずと自分から膝を立てて、体勢を取り直した。
「さんぞ……?」
「……好きに、しろ」
三蔵のくぐもった声が、微かに悟空の耳に届く。
「え? で、でもっ」
「何度もおんなじ事、言わせるんじゃねーよっ!」
枕に顔を埋めたまま、耳もうなじも真っ赤に染めて、三蔵が半分自棄に叫んだ。
「……う、うん。ありがとう、三蔵」
死にたい程の羞恥と屈辱を噛み殺して自分に身体を委ねてくれた三蔵に、悟空は心からの感謝と労わりのキスを真っ赤に染まり涙の跡を残す頬に贈ると、そっと三蔵の足元に跪き、愛しい人を驚かさないようにその白い双丘を割った。 「んっ」
「大丈夫だかんね、三蔵」
優しくその滑らかな肌を撫でながら、悟空はその奥深くに息づく三蔵の蕾にそっと唇を寄せる。
「ご……っ」
あらぬ場所に悟空の唇が触れた事に衝撃を受けて、思わず声を上げそうになった三蔵は、咄嗟に枕をぎゅっと噛み締めてその声を殺した。 少しでも自分が驚いたり、拒絶の素振りをみせれば、悟空は即座にこの行為を止めようとするだろう。悟空の手によって三蔵は一度その熱を解放しているが、悟空の昂ぶりはまだそのままだ。身体中を駆け巡る衝動を押し殺して、悟空は三蔵の身体を開く事に専念している。
自分の欲望よりも、三蔵の身を案じ、その快楽を優先しようとする悟空。そんな彼の想いに応える為にも、今はただ彼に全てを委ねてこの身を任せるしか、自分に出来る事はない。それがたとえ、どんなに恥ずかしく、屈辱的な事であっても。 悟空はいつだって三蔵の事だけを想い、行動しているのだから。この行為だって、彼の自分への溢れ出る愛情の証なのだから。
悟空の熱い舌先が何度か蕾の周りをなぞる。 その濡れた感触に、三蔵の背中が微かに震える。
充分に唾液で濡らした蕾を慎重に指で押し開き、悟空はそっと舌先を尖らせてゆっくりとその内部に侵入させていく。 「あ、あぁぁ……」
誰の目にもふれさせた事のない秘所を舌で弄られるその感触に、三蔵はすすり泣きにも似た切ない喘ぎをその白い喉から漏らす。 唾液で充分に潤ったそこに、悟空はそろりと指を一本含ませた。
「んっ」
「痛い?」
「だ、いじょうぶ……」
小刻みに肩を震わせながら、苦しげに三蔵が応えた。 確かに異物による圧迫感は酷いが、先程のような痛みは殆ど感じない。
あからさまに安堵の表情を見せた悟空は、そのまま三蔵の内部を傷つけないようにと細心の注意を払いながら、小刻みにその指を動かした。
「あっ、やぁぁっ!」
敏感な内壁の襞を指の腹で擦られる刺激に、三蔵は白い背中を綺麗に反らせて悶えた。 きゅっと熱い三蔵の内部が、悟空の指を締め付ける。
「三蔵、感じてる?」
「ば、馬鹿……。あぁっ」
ゆっくりと出し入れを繰り返し、三蔵の蕾がその指に馴染んだ頃合いを見計らって、二本、三本と含ませる指を増やしていく。 流石に三本目の指を受け入れた時には、内臓を押し上げられるような圧迫感と痛みに、三蔵は苦しげに美眉を顰めて呻いたが。
それでも確実に三蔵の身体は、悟空を受け入れる為の器へと変貌していった。 悟空が指をくゆらす度に、蕾の中から溢れ出る唾液が、濡れた音を響かせる。 骨太な指が見つけたポイントをしつこい程に指の腹で刺激してやると、三蔵は金色の髪を振り乱してすすり泣く。
「ご、ごく、もぉ……」
三蔵の内部はきつく悟空の指を絡め取り、更に奥へ奥へと誘う動きをみせ始めていた。 もうお互い限界である。
「三蔵、いい?」
「は、はや、く……あぁぁっ」
勢いよく内壁を擦り上げて蕾から出ていく指から与えられた刺激に、三蔵の薄紅色に染まった肢体がびくり、と大きく跳ねた。去っていく指を惜しむかのように収縮を繰り返す愛らしい蕾に、悟空はたまらない程の愛しさを感じてそっとくちづけを落とす。悟空の手によって敏感に仕立てられた三蔵の身体は、その微かな唇の感触さえも刺激として受け入れてしまう。 「やっ、ん」
過ぎる快感に軽い痙攣を起こしている愛しい人の身体を、悟空はそっと仰向けにし、優しく愛情の限りを込めてその痩躯を抱擁する。
涙と汗でぐちゃぐちゃに汚れた三蔵の顔。でも誰よりも綺麗で、誰よりも崇高で。 所有の証を無数に刻まれたその肢体も、その震える肩も、自分をみつめる潤んだ熱っぽい紫暗の瞳も。その何もかもが、たまらなく愛しくて。
「愛してるよ、三蔵」
頬に残る涙の跡に、そっとくちづける。
「これからも、ずっと傍にいてね?」
俺もずっと三蔵の傍にいるから。ずっとずっと、離れないから。
耳朶を甘噛みしながら低く囁かれた言葉に、三蔵は震える腕をそっと伸ばして悟空の背中に回し、悟空の心臓の上に顔を埋めた。
「三蔵……」
もう一度三蔵の頬に羽毛のようなキスを落とすと、悟空は三蔵の細い足を持ち上げ、まだ一度も解放していない、猛り狂う自分自身を熱く解かした三蔵の秘所に押し当てた。
「あ、あぁぁ……っ」
「さんぞっ」
ゆっくりと秘肉を割って押し入ってくる熱い塊の、あまりの圧迫感に、三蔵は白い喉を仰け反らせて苦しげに喘いだ。 指とは比べ物にならない程の熱と質量。
これが悟空なのだと。自分を求めて、自分だけを望んで、自分だけを見つめてきた、自分だけの馬鹿猿。 そんな悟空を自分自身、どれ程求めていただろうか。 そして今、やっと自分の身体で悟空の想いを受け止める事ができるのだと。 それを思えば、この痛みも苦しみも、甘美なものに思えてくる。
「三蔵、大丈夫?」
三蔵を傷つけないように、と慎重に身体を進めてきた悟空は、ようやく全てを三蔵の身の内に収め、愛しい人の身体の上に覆い被さったままそっと訊ねる。 こくり、と弱々しく頷く誰よりも愛する人。
「動くよ」
「あっ……あぁぁぁっ!」
三蔵の細い腰をがっちりと掴むと、悟空はぎりぎりまで己を引き出し、そして強く打ちつけた。 最奥を目指して強く、激しく、そして限りない優しさを込めて、三蔵の身体を侵食する悟空の熱い肉塊。
何も考えられなくなる程に貪られ、揺すられて、三蔵の肉は自分を満たす愛しい者を離すまいと、無意識のうちにも悟空にきつく絡みつく。
「くっ……」
交わる一点がどろどろに溶け合うような錯覚を覚える。 このまま溶けて、ふたりがひとつになるような錯覚。
けれど、ひとつの存在ではないからこそ、こうして求め合う事ができる。 愛し合う事ができる。
共に生きていく事が出来る。
痛みと、それを上回る快楽に、三蔵は理性を手放して喘ぎ狂う。 そんな三蔵の壮絶な色香に、悟空も自分の猛る欲望を抑える事を放棄し、本能のままに愛しい人の身体を貪り尽くす。
「ご、ごくぅっ!」
「さんぞ、さんぞうっ!」
ぐっと三蔵の腰を引き寄せると、悟空は切ない程の愛しさを込めて愛する人の身体の奥深くに、自分の想いの丈を注ぎ込む。
「ひっ、あぁぁ……っ!」
最奥に受けた熱い迸りの衝撃に、三蔵自身も己の熱を解放した。
ゆっくりと沈んでいく意識の中で、悟空の唇が自分の唇に触れるのを、三蔵はどこか遠い出来事のように感じた。 そのくちづけは、思わず泣きたくなる程に優しく、そしてあたたかいものだった。
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