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ju  te  veux

 

「触んじゃねぇっ!!」

ぱしりっと、弾けた音と共に手のひらに熱い痛みが走る。大好きな三蔵の肌に触れようとした悟空の手は、愛する人の手によって払われて、その行き場をなくす。

「・・・さんぞ?」

「俺に、触んじゃねぇ。近寄るなっ!!」

冷たい声音でそう宣言すると、三蔵は唖然としたまま自分をみつめるペットにくるり、と背を向ける。

訳も判らずに拒絶された悟空の戸惑いと悲しみの視線が背中に突き刺さるのが、やけに痛く感じたのは、気のせいではなかったかもしれない。

 

西へと向かう旅の途中。休憩の為にジープを止めて、木陰で休む三蔵一行。

ちらり、ちらり、と三蔵を横目で見ては、悟空は小さくため息をついていた。そんな光景を八戒と悟浄は、かれこれ2週間も目にしている。そして肝心の三蔵は、そんな悟空の熱い視線を完全に無視して、目の前に広げた新聞の活字を追っている。

(やべぇな、こりゃ・・・)

悟浄は、こっそりとひとりごちる。三蔵様至上主義で、養い親であり飼い主でもある三蔵に一途な愛情をよせる悟空。そんな小猿の愛情と優しさにほだされたのか、あの人嫌いで高慢ちきな三蔵がペットの想いを受け入れて、他人ではない関係にある事は悟浄も八戒もすでに知っている。

しかし、元来開けっ広げで三蔵への愛情を隠さない悟空とは違って、三蔵はふたりの関係を第三者に口にされるのを、非常に嫌がる。そんな三蔵をからかうのが楽しくて、なにげなく言った一言がこんな大事になるとは。流石の悟浄も想像もしていなかった。

『後悔、先に立たず』。先達の教えは、馬鹿にできないものである。

 

あれは、そう。丁度2週間前の宿屋での出来事。

八戒が悟空を連れて買出しに行った為、三蔵と悟浄が留守番の形で宿に残った。ぼんやりと視線を三蔵に向けた悟浄の赤い瞳に映ったのは、無心に新聞を読む三蔵の横顔とアンダーシャツの襟からのぞく白い首筋。その首筋には、くっきりと紅い花びらのような刻印が残っている。

誰がつけたかなんて、言うまでも無い。三蔵にこんな印をつける事が出来る人物は、この世にただひとりだ。

普段は高慢で横暴な飼い主であるこの三蔵が、ベッドの中では飼い猿に素直に翻弄されているのか、と思うとたまらなく面白くて。つい、言ってしまったのだ。

『三蔵サマ、キスマーク発見!』

その時の三蔵の顔ときたら。一瞬顔を強張らせたかと思うと、頬を真っ赤に染めて。お約束の通り、首筋に手をやった。そんな初々しい姿に―――まさか、三蔵がそんな反応を返してくるとは思わなかったから――よせばいいのに、益々三蔵をからかってその反応を楽しみたくなった。

「三蔵サマ、お熱いね~。それ、猿が付けたんしょ? マーキングにしては大胆だね~」

「・・・」

きっ、ときつい紫暗の視線がエロ河童を貫くが、そんな事で動じるオトコではない。尤も、ここで動じて黙ってさえいれば、この後痛い思いをせずに済んだのだろうが。

珍しい三蔵の反応と、彼をやり込める事が出来るかもしれないという誘惑に、今の悟浄にはそんな事を考える余裕はない。

「しっかし、まーさーかー三蔵サマとお猿ちゃんがねー」

「・・・うるせぇ」

「三蔵サマが女役? だろーね。結構あの猿もヤルじゃん」

三蔵の額に怒りの青筋が、ぴきり、と浮かび上がる。

「・・・うるせえんだよ」

唇をわなわなと震わせているのが、また楽しい。まさか、あの三蔵サマがここまで動揺するとは。こんな姿、この先一生拝めないかもしれない。

つい、つい調子に乗ったエロ河童が、全身を羞恥と怒りで震わせている最高僧の上に、命知らずにも直下型爆弾を投下した。

「それにしても、三蔵サマがあのチビ猿にいいようにされてる姿ってのも、想像つかねーよな。どう? 今度俺ともヤって・・・」

ぶちりっ。

それは、ただでさえ短い三蔵の忍耐の糸が切れた音だろうか?

「うるせえってのが、判んねーのかっ! 死ね! このエロ河童―――っっ!!」

喉が裂けんばかりの絶叫と共に、S&Wが火を噴く。続いて三蔵の双肩から伸びる魔天経文に追われて、命からがら逃げ出した悟浄が、あの日を境に三蔵が悟空を拒んでいる、と知ったのはそれから10日程経ってからだった。

 

 

(まさか、三蔵がそこまであんな冗談気にするなんてなー)

案外デリケートなんだなぁ、といささかピントの外れた事を考えながら、悟浄は三蔵の横顔をぼんやり見つめる。

二人の関係については先刻承知だったが、今までそれをネタに三蔵をからかった事はなかった(悟空は、度々からかいの対象になっていたが)。暗黙の了解のようなもので、三蔵にはこの話題は触れないというのが、自分と八戒、そして三蔵の間にはあったのだ。

潔癖症の三蔵には、いささかキツイ冗談だったのかもしれない。もともとが、こういった話題を嫌がる傾向があった三蔵。それが、まあ身内扱いの悟浄に悟空との関係を指摘され、しかも自分が受け身であるという事をからかわれたのが、堪らない屈辱だったのかもしれない。

(で、八つ当たりで猿を拒んでいるってかー?)

大人げねー奴。と、自分の行いは棚に上げて我侭で、実は子供っぽい最高僧を心の中で非難する。

しかし、ここで知らん顔をしているのも、何となく寝覚めが悪い。なんと言っても、なにも悪くはないのに愛する三蔵様から理由も判らずお預けを食らわされている悟空が、同じ男として哀れでならない。

(しゃーねーな。じゃ、責任とらせていただきますか)

このあと自分に襲いかかる不幸も知らず、のん気に悟浄はぷわぁと、紫煙を吐き出しながらそう考えていた。

 

 

「三蔵サマ、ちょっといい?」

運良く取れた個室で寛いでいる三蔵のもとを訪れたのは、諸悪の根源・エロ河童。

「よくねえ。さっさと出て行け」

不機嫌丸出しの声で切って捨てるように言う三蔵に苦笑いをすると、悟浄はお構いなく部屋に供えてある椅子を引いて腰掛ける。

「出て行けって言ってるのが、聞こえねーのか。 ああ?」

三蔵はあからさまに嫌そうに眉間に皺を寄せた、整った顔を悟浄に向ける。

「聞こえたけど、聞いてねえ」

「・・・馬鹿か、てめぇは」

呆れ果てたように吐いて捨てると、三蔵はそれきり無視を決め込んで意識の中から、河童をシャットアウトする。

こいつがなにか喋ると、ロクな事を言いやしない。この間の時だって、そうだ。

他人には触れて欲しくはなかった、悟空との関係。自分にとっては、まだまだガキでペットで養い子の小猿。そんな悟空と関係を持った事を後悔している訳ではないが、それでもそれを指摘されるのがたまらなく嫌だった。

そっとしておいて欲しい。それが三蔵の本音だったのかもしれない。

自分と悟空の事は、ふたりだけの間に秘めておきたいのだ。

羞恥かもしれない。他人を必要としないと公言している自分が、認めたくは無いが悟空を必要としている事実が、まだ三蔵の中で整理できていないのかもしれない。

そして、いつの日か悟空が飛び立っていった時に、ひとりでその喪失感に耐える事ができるように。その時には決して、慰めも同情も欲しくはなかったから。

それなのに、この河童は・・・。

三蔵が内心怒りをメラメラと燃え上がらせているのに気づかないのか、悟浄はベッドに腰掛けて新聞をもつ手にぎゅっと力を込めている三蔵の前に立つ。

「鬱陶しいんだよ、前に立つんじゃねぇ」

「最近、猿とヤッてないんだって?」

「・・・っ!」

あからさまな悟浄の物言いに、羞恥の為かそれとも怒りのためなのかは判らないが、三蔵の頬が真っ赤に染まる。

「この間、俺が言った事を気にしている訳? 三蔵サマともあろうモンが」

「・・・出て行け」

口元を引き攣らせて、三蔵が掠れた声で呟く。

「それとも、お猿に飽きたってか? だったら、やっぱ俺とヤらねぇ?」

「いい加減にしろ、死にてえかっ! このエロか・・・っ!」

悪態を最後まで叫ぶ事も出来ず、三蔵はいきなり悟浄に押し倒された。三蔵と悟浄の体重を受けて、ベッドが耳障りな軋みを上げる。

三蔵の両手首を片手で頭の上に括りつけると、悟浄は馬乗りになって、彼の動きを封じた。三蔵は全身で抗うが、所詮は人間の身だ。妖怪の悟浄相手ではびくともしない。その歴然とした力の差を見せつけられて、三蔵の顔が屈辱に歪む。「オマエさ、あの猿がてめーがどんな我が侭言っても、何も思わねえーとでも思ってんの?」

三蔵をやすやすと組み敷いた悟浄が、三蔵の首筋をそっと指先で撫でる。その瞬間、三蔵の全身を嫌悪感が走り、さっと肌が粟立つ。人に触れられるあまりの気持ち悪さに、吐き気を覚えた。

相手が悟空ならば性感を刺激されるであろうその動きも、今の三蔵にとってはおぞましいものでしかない。血の気が引いて指先が冷え、唇からは赤みが消える。そんな三蔵の様子をさして気にもせずに、悟浄は骨張った指で三蔵の首筋をつーっ、と撫で続ける。その動きに、三蔵はぎゅっと眉を顰めて唇を固く噛み締める。

「猿だって、男なんだぜ。訳も判らずてめぇの気まぐれでお預けばっか食わされてたら、いい加減愛想つかして離れていくかもしれねーって考えないワケ?」

悟浄の言葉に、三蔵はさっと顔色を変えた。

「恋愛なんて、フィフティ・フィフティ。同等なんだぜ。てめぇが悟空の飼い主気取りで君臨しているウチは、マトモな恋愛関係なんて築けねーぜ?」

「ざけんなっ! 誰があんな猿なんかと・・・っ」

河童の言い草に思わず紫暗の瞳を開いて眼前の紅い瞳を睨みつけたが、悟浄は、ふん、と鼻を鳴らすと、三蔵に言い聞かせるように、ゆっくりと彼の耳元で囁いた。

「惚れてねえ、とは言わせねーよ、三蔵。本当に必要としていないようなヤツに、オメエは抱かれたりは、しねえだろ? てめぇは、そんなヤツじゃねえだろう?」

「・・・ごじょ・・・」

三蔵が、大きく瞳を見開く。と、その時。

「あぁぁぁっ!! こんの、エロ河童――――っっっ!!」

ばったーん、と勢いよく開かれた扉から、なにやら小さな塊が飛び込んできたかと思うと、がきっ、となにかが砕けるような音と共に、悟浄の身体が部屋の外まで吹っ飛んだ。壁に叩きつけられる音に続いて、ぐぇっ、と蛙の潰されたような悲鳴。突然の事に、三蔵はなにが起きたのか思考がついていかない。ただ、自分に圧し掛かっていた悟浄の身体がなくなったかと思うと、慣れ親しんだ匂いと、あたたかい腕が三蔵の身体を起こして包み込む。

「・・・ごくぅ?」

掠れた声が、青ざめた唇から零れる。自分を抱き締める腕は、たしかに自分の馬鹿猿のものだった。

「さんぞ、さんぞ、大丈夫か? エロ河童が、ヘンな事してねーかっ?」

「・・・ヘンな事って、なんだよ」

普段なら、やかましい、とか、抱きつくな、鬱陶しい、とか言ってハリセンを問答見無用で食らわせてやるところだが、意外に大人しく三蔵は悟空の腕に収まっていた。

他人の指が直に自分の肌に触れた感触のおぞましさと、あの時悟浄が言った『いつか悟空に愛想をつかされる』という言葉に、自分でも思ってもみない程動揺しているようだ。

「だってエロ河童のヤツ、さんぞーの上に乗っかってたじゃんっ! その上、いやらしくさんぞーの首筋触って、耳元でなんか言ってたっ! ぜってー、許せねぇっ!!」

そんな三蔵の心中も知らず、最愛の人をぎゅうぎゅうと抱き締めたまま、悟空が息巻いている。どうやら、話の展開のわからない悟空は、悟浄が三蔵に善からぬ事をしようと、ベッドに押し倒したと勘違いしているらしい。たしかに傍からみれば、そんな格好だったかもしれないが。

「なにも、されてねーよ」

三蔵が、小さく呟く。

「でも、顔色すっげー悪いよ? やっぱ、河童がなんか・・・」

「なんでもねーって言ってんだろうが! 俺のいう事が信じられねーのか?」

「そ、そんな事はねえけどさ。でも・・・」

おろおろと、心配そうに大きな満月を思わせる瞳が、紫暗の瞳と絡み合う。

「・・・なんだ?」

「・・・悟浄なんかに三蔵を抱かせるために、俺ガマンしてたんじゃねーもんっ!!」

一瞬躊躇したが、それでも悟空はここ数週間の鬱屈を晴らすように、本心を大声で叫んだ。

理不尽に、悟空を自分の周囲に近づけなかった。ただ、悟浄の言葉が腹立しかったから。それだけで。さぞ、悟空からすれば、いい迷惑だろう。しかし、そんな悟空に謝罪の言葉をかけられるような三蔵ではない。厚めの唇から紡がれる言葉は、どこまでも本音からは遠いものだ。

「・・・当然だ。俺が触るなっていうのに逆らったら、ハリセン往復ビンタ食らわせる」

「判ってっけど。でも、ハリセンで殴られるのが嫌だからガマンしたんじゃなくて。三蔵が嫌だっていうから、俺ガマンしたんだよ?」

「・・・」

思いがけない悟空の言葉に、三蔵が返す言葉を失う。

確かに、腕力の差は歴然としている。人間と妖怪のハーフである悟浄にでさえ、組み敷かれた時は、身動きが取れなかったのだ。悟空が本気で、力ずくで三蔵の身体を奪おうとすれば、ハリセンなど武器にもならない。三蔵は到底拒む事などできないだろう。

「でも、それじゃ、ごーかんだろ? 俺、そんなのヤだもん」

愛する人の金糸をそっと驚かさないように、優しく悟空の指先が梳いていく。

「俺さ、さんぞーを抱く時って、すっげー嬉しくて幸せな気分になるんだ。だからさ、さんぞーにもそういう気持ちになって欲しいじゃん? だったら、さんぞーが嫌だって時は、抱いても、さんぞー幸せな気持ちになってくんないだろ?」

・・・誰が、てめーに抱かれて幸せな気分になるって? ボケた事抜かしてるんじゃねえ。心の中でそう悪態をつきながらも、三蔵の心は不思議と満たされていく。

「よくわかんねーけど。さんぞー、嫌だったんだろ? 俺はいつでも三蔵に触れていたいけどさ。さんぞー、人に触られるの、嫌いだもんな」

だから、時には悟空との性的な触れ合いが疎ましく思う時もあるだろうし、なによりも同性の悟空に抱かれているという事実が、プライドの高い三蔵には許せない時もあるのかもしれない。

「できるだけさ、さんぞーが気持ちよくて、触られて気持ち悪いって感じねぇようにはしているつもりなんだけどさ。でも、気がつかねえウチにさんぞーに無茶してるかも、しれねーし。俺、馬鹿だからホントによくわかんねーけど」

そう言いながらも、悟空は柔らかく羽毛で包むかのように三蔵の身体を抱き締める。

(猿が、気ぃ使いやがって・・・)

悟浄にからかわれた八つ当たりに悟空を拒んでいたにすぎないのに。自分の接触嫌悪を気遣っていたというのか。そして、同性で年下の悟空に抱かれる気恥ずかしさや己のプライドも。

(ガキは、俺の方じゃねーか)

なんで悟空は、こんな理不尽な自分の我が侭さえも、受け入れてしまうのだ。きっと悟空に言わせてば、『だって、俺さんぞー愛してるもん』と、理由にもならない事を、当たり前のような顔をして言うのだろう。

悟空を拾って、8年。

悟空ばかりがどんどん成長していく。大人になって、自分を大きく包み込もうとしている。そんな悟空に追いつく事ができない。結局いつまでたっても自分は、師を喪った13の時から、成長していないのだから。

所詮自分には、フィフティ・フィフティ――同等――になんか、悟空と接する事ができない。どう接すればいいのかすら、判らない。だから、いつまでたっても『飼い主とペット』『保護者と被保護者』の枠から抜け出そうとしないのだ。

いつかは悟空が親離れをして、自分の手を離れて飛び立っていく日が来る事は判ってはいるが。その前にこんな自分に愛想をつかして離れていってしまうかもしれない。

「さんぞ?」

今だ、腕の中で蒼白な顔をして小刻みに震える三蔵を、気遣うように金瞳が覗き込む。

「まだ、気分悪ぃ?」

心の不安と共に、悟浄に触れられた時の不快感がまだ抜けずにいる。悟空を拾って以来、いつも小猿の小さな手が三蔵に触れていた。人のぬくもりを求めるその手が、愛する人の全てを求める手に変わっても。悟空が自分に触れる手に、嫌悪を感じる事はなかった。

いつの間にか悟空によって、多少なりとも触れられる事に対して免疫がついたのだとばかり思っていたが。接触嫌悪がなくなった訳ではない。悟空だから大丈夫だったのだ。悟空の手だったからこそ、安心して受け入れられたのだ。

「さんぞ?」

三蔵は、もそもそと悟空の腕の中で身を動かすと、小猿の胸に顔を埋める。

「このままで、いろ」

とく、とく、と伝わってくる、悟空の鼓動。それだけで、こんなにも安心できる。他人の手に触れられた不快感も、嘘のように消えていく。

いつかは、これを失う日がくるのだろう・・・。そう思って、ぎゅっ、と固く瞼を閉じる。

「さんぞ、大好き。さんぞーが世界で1番好きだよ?」

そんな三蔵の心を癒すかのように、悟空が繰り返し、繰り返し、愛する人の耳元で囁く。それは魔法の呪文のように、三蔵の心に染み込んでくるが。

「・・・ふん、腹ン中じゃ、横暴で鬼畜生臭な飼い主だと思ってんじゃねーのか」

しかし照れ隠しなのか、やはり悟浄の言葉に心が揺らいでいるのか。三蔵が仏頂面でぼそり、と呟く。

「え? 確かにそーだけどさ」

三蔵の言葉に髪を梳く手を止めると、驚いたように金瞳を大きく見開いた悟空だったが。

「でも、それもひっくるめて、さんぞーを愛してるんだよ?」

当然じゃん、とばかりにきっぱりと言い放つと、にこっと最上の笑顔を最愛の人に向けると、悟空の言葉に動揺する三蔵の細い身体を力いっぱいぎゅっ、と抱き締めた。

 

 

その後暫くの間、悟空によって顎の骨を砕かれかけて、顔をギブスで固定されたエロ河童の情けない姿があったとか。(なんで、猿の為に三蔵に説教してやって、こんな目に合わされなきゃ、いけねーんだっ!?)

という、悟浄の心の叫びに、

「元はといえば、あなたが三蔵に余計な事を言ったのが全ての元凶ですよ。その上理由はどうであれ、悟空の目の前で三蔵を組み敷くなんて。そういうのを自業自得というんですよ」

と、三年来の相方にあきれ果てたように言われて、ぐぅの音も出ない悟浄であった。

 

おわり

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